
EOL棚卸しの手順|サポート切れのOS・ミドルを一人で洗い出す
「このOS、たしか去年サポート切れになったはず……」。 ふとそう思ったとき、次に来るのは「じゃあ、うちのどのサーバーが該当するんだっけ」という不安だと思います。1台ならまだしも、何年も動かしてきた環境だと、OSもデータベースも言語のバージョンも、頭の中では正確に思い出せないですよね。
一人で保守を背負っていると、この「全体像が見えない」状態が、地味にずっと重くのしかかります。切れているかもしれない。でも、確かめる時間もない。かといって放っておくのも落ち着かない。
でも、これは記憶力や知識の問題ではありません。「今あるものの一覧」が手元に無いだけです。一覧さえあれば、どれが急ぎで、どれが後回しでいいかは、静かに判断できます。今日は、その一覧を一緒に作りましょう。全部を今日中に終わらせなくて大丈夫。まず1台、目の前のサーバーに何が入っているかを書き出すところからで十分です。
結論:①今あるサーバー・OS・ミドルウェア・言語ランタイムを1枚の表に洗い出し、②各製品の「サポート終了日(EOL)」を公式情報で埋め、③「もう切れている/もうすぐ切れる」を上に、外部公開されているものを優先して並べ替える。この順で、まずは1台ぶんだけ表にするところから。
EOL(End of Life=製品のサポート提供が終わる時期。以降はセキュリティ修正が出なくなることが多い)の考え方や終了日は、製品・エディションによって変わります。本文は自分の構成に読み替えつつ、終了日の細部は必ず各ベンダーの公式情報で確認してください。
なぜ「EOLの棚卸し」で手が止まるのか
- そもそも「今、何が・どのバージョンで動いているか」の一覧が無い
- サポート終了日をどこで調べればいいのか分からない/製品ごとにバラバラ
- 切れていると分かっても「じゃあどうする」の当てがなく、見るのが怖い
- 全部を一度に上げようとして、大きすぎて動けなくなる
どれも「気合いで思い出す」では解けません。だから、頭の中でぐるぐる考えるのをやめて、書き出す→調べる→並べるの順に、手を動かす作業に変えます。棚卸しは、判断ではなく作業です。作業は、小さく分ければ必ず終わります。
手順①:今あるものを1枚の表に洗い出す
まずは「棚卸し表」を1枚作ります。難しく考えず、次の列を用意して、分かるものから埋めていきます。
- 対象(サーバー名/サービス名。例:本番Web、DBサーバー、バッチ用)
- 種類(OS/ミドルウェア/言語ランタイム/主要ライブラリ)
- 製品名とバージョン(例:Ubuntu 20.04、MySQL 5.7、PHP 7.4)
- 役割(何に使っているか。例:公開サイト、社内管理、外部連携API)
- 外部公開の有無(インターネットから直接届くか/社内だけか)
「今あるものが分からないから棚卸しをするのに」と思いますよね。だからこそ、記憶ではなくサーバーに聞くのが確実です。
実際に何が動いているかは、サーバーに聞く
思い出そうとせず、コマンドで現状を吐き出させます(環境により異なるので、自分の系統のものを使ってください)。
- OSのバージョン:
cat /etc/os-release/lsb_release -a - 入っているミドル・言語:
php -vmysql --versionnginx -vpython3 -Vなど、思いつくものを一通り - パッケージ一覧(Debian/Ubuntu系):
dpkg -l/(RHEL系):rpm -qa - 今まさに動いているサービス:
systemctl list-units --type=service --state=running - 外部に開いているポート:
ss -tlnp(どのプロセスが待ち受けているか=外から届く入口)
コンテナやマネージドサービスを使っているなら、イメージのタグ(FROM php:7.4 など)やマネージドの管理画面に表示されるバージョンが、そのまま棚卸しの材料になります。
一気に全部やらなくて大丈夫です。今日は一番大事な1台だけ、この現状出力を取って表に写す。それだけで、頭の中のもやが一つ晴れます。
手順②:サポート終了日(EOL)を公式情報で埋める

表に製品とバージョンが並んだら、次は各行に「サポート状態」の列を足して、次の3つを書き込みます。
- サポート終了日(EOL)
- 今日から見た状態(もう切れている/半年以内に切れる/まだ先)
- 確認した情報の出典(どのページで確認したか。あとで見返せるように)
終了日の調べ方は、製品ごとにバラバラで迷いやすいところです。基本は次の順で当たります。
- 各ベンダーのライフサイクル公式ページを最優先(「製品名 end of life」「製品名 サポート ライフサイクル」で検索)。これが一次情報です。
- 横断的にざっと確認したいときは、endoflife.date のような集約サイトで見当をつけ、最終確認は必ずベンダー公式で裏を取る。
- OSやミドルはエディション・LTSかどうかで終了日が変わります。「バージョン番号」だけでなく「どのエディションか」まで合わせて確認します。
数字(終了日)は思い込みで書かず、必ずページを開いて確認した日付を書き写します。ここを丁寧にやっておくと、あとで「本当に切れてる?」と不安が再燃したとき、表を見るだけで済みます。
手順③:優先順位をつける(全部を今すぐ上げなくていい)
切れている項目が並ぶと、つい「全部やらなきゃ」と焦ります。でも、一人で全部を同時には上げられません。危ないものから順に手をつけるために、次の2軸で並べ替えます。
- もう切れているか(緊急度):すでにサポート終了>もうすぐ終了>まだ先
- 外部から届くか(露出):インターネット公開>社内のみ>閉じた検証用
この2軸で、ざっくり3段に仕分けます。
- 最優先:すでにサポート切れ+インターネット公開。ここは、更新の計画をすぐ立て始める対象。すぐ上げられないなら、公開範囲を絞る・前段でアクセス制限をかけるなどの暫定策も並行して考える。
- 計画的に:切れている(またはもうすぐ)が社内のみ・限定的。次の定期メンテやリプレース計画に組み込む。
- 記録して見送り:まだ先、または閉じた環境。表に「次に見直す時期」だけ書いて、いったん手放す。
ここで大事なのは、見送りも立派な判断だということです。「今は上げない」と決めて記録できていれば、放置とは違います。放置は「決めていない」状態のこと。あなたは決めた。それだけで、状況はコントロール下に入っています。
なお「切れている=今すぐ全部差し替え」ではありません。更新には、影響範囲の調査や検証がついて回ります。棚卸しはあくまで地図づくり。地図ができたら、危ない道から一本ずつ、落ち着いて直していけば大丈夫です。
明日やること(まず1つだけ)
- 一番大事なサーバー1台を選び、
cat /etc/os-releaseなどで現状を吐き出す - その出力を、対象/製品名/バージョン/役割/外部公開の列がある表に写す
- OSとデータベースの2つだけ、公式ページでサポート終了日を確認して書き込む
これだけで、「なんとなく怖い」が「この2つが要注意」に変わります。残りは、また別の日に1台ずつで十分です。
チェックリスト
- 棚卸し表を1枚用意し、対象・製品名・バージョン・役割・外部公開の列を作ったか
- バージョンを記憶ではなくコマンド/管理画面で確認して書いたか
- 外部から届く入口(公開サービス・待ち受けポート)を把握したか
- 各行にサポート終了日(EOL)を、公式情報で確認して書いたか
- 確認した出典(ページ・確認日)を残したか
- 「もう切れている/もうすぐ/まだ先」で状態を色分け・仕分けしたか
- 「切れている×外部公開」を最優先として、上に並べ替えたか
- すぐ上げられない最優先項目に、暫定策(公開範囲を絞る等)を検討したか
- 見送るものは「次に見直す時期」を書いて、いったん手放したか
- この表を、次回も更新できる場所(引き継ぎ資料と同じ所)に置いたか
全部そろわなくて大丈夫です。表を1枚作って、OSとDBの終了日を埋めるところまでできれば、それだけで「見えていなかった不安」の大半は形になります。
よければ、こちらも
EOLの棚卸しで作った「今あるものの地図」は、このあとのパッチ適用や改修とそのままつながります。「危ないものを見つける型」「壊さず直す型」をセットで持っておくと、更新のときにぐっと楽になります。
- セキュリティパッチ適用の進め方|壊さず一人で回す手順:棚卸しで見つけた要更新に、実際にどう当てていくかの型です。
- 既存システムの改修|影響範囲を見落とさない調査の順番:バージョンを上げる前に「どこまで響くか」を調べる1枚です。
- 作った人がいないシステムを引き継いだ初日にやること:引き継ぎと同時に棚卸しを始めるなら、初日の足場づくりから。
- SSL証明書の期限切れを防ぐ更新と監視:EOLと同じ「期限を切らさない」仕組みづくりの実例です。

サポート切れが心配なのに手が止まるのは、「今あるものが見えていない」からでした。でも、1台ずつ現状を書き出して、終了日を公式情報で埋めて、危ないものから並べ替えれば、「なんとなく怖い」は「この項目が要注意」という具体的な地図に変わります。地図さえあれば、あとは危ない道から一本ずつ直していけばいい。全部を今日やる必要はありません。 まずは1台、目の前のサーバーに何が入っているかを書き出すところから。その一歩が、漠然とした不安を、手をつけられる作業に変えてくれます。動いているものを長く安全に守り続ける——それは、あなたが思うよりずっと、価値のある仕事です。
ほかの実務ヒントは記事一覧からどうぞ。保守運用の小さな備えを、メールでも少しずつお届けしています。